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はじめに
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顎関節症という診断名(実際は症候名)は, Foged(1949)が用いたtemporomandibular arthrosisを上野ら(1956)が邦訳したものです。
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関節痛,関節雑音,異常顎運動を主徴とする症例を臨床的に一括して「顎関節症」といいました。
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岡らの提案で顎関節研究会(1980)が発足し、1988年日本顎関節学会に発展改称しました。
諸外国では顎関節症は顎関節だけの問題ではないところから
TMD(Temporomandibular Disorders)=側頭下顎部障害と名称転換され、
さらにはOFP(orofacial pain)=口腔顔面痛という概念に統合される傾向にあります。
頭痛大学でも引用した文献が顎関節症と書いてある場合はこちらの用語を用いていますが、読者におかせられましては適宜TMDと読み替えてください。
医師はコステン症候群が顎関節症の同義語として信じられています。
多くの神経学の教科書がそのように解説していますが、これは「誤り」です。
なお表層的な知識しかないのに、顎関節症の怪しげな知識を宣伝したり、
独自の顎関節症理論を主張している先生が少なくありません。
学会や研究会の名前がついていてもかならずしも信用できません。
しっかりとした鑑識眼を身につけていきたいものです。
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TMDの考え方、診断、治療については下記の本をぜひ参考にしてください。
これにすべてがつきています。
顎関節症とは
- 慶應大学慶應大学口腔外科口腔外科和嶋講師の解説 AOL news82より,1998
- ■顎関節症(TMD:temporomandibular disorders)の定義
- 「顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主症候とする慢性疾患群の総括的診断名」(日本顎関節学会)。
- 顎関節、咀嚼筋などに疼痛、機能障害を生じる疾患の集合病名である。
- 原因として以前は咬合異常が重視されていたが、
最近では多因子説が支持されている。(ストレスによる食いしばり・歯ぎしりなど)
- 男女別では女性が男性の3〜5倍多く
- 年齢的には20〜30歳代に多く、
- 20歳代女性が1/3を占める。
- 患者数は年々増加頃向にあり、
- 当科外来では新患の約1割を占めている。
- ■顎関節症の症状と分類
- 顎関節症の主な症状は、
顎関節が痛い、
咀嚼筋が痛い、
ロが開かない、
関節を動かすと音がする、
顎がだるい、などである。
- 症状は片側性の場合が多く、主に偏って咀嚼する側に生じる。
- 痛みは運動時痛が主で、自発痛は少ない。
- 朝、起床時や食後などに症状の増悪がみられることがある。
- 肩こり、緊張型頭痛、背部痛など筋症状の合併が多い。
- 国際頭痛学会が緊張型頭痛の原因のひとつにOromanbibular dysfunctionをあげている。
- 日本顎関節学会の分類は表1。
- 最も多いのは関節円板障害で、痛みの他、関節音、開口障害などを示す。
- 症状は重複することが多く、
またそれぞれに、精神的要因、ストレスが関与している場合も多い。
- ■発症のメカ二ズム
- 顎関節症は、咀嚼筋の機能亢進により、
筋自体や顎関節などの咀嚼器官に過剰負荷が加わることにより始まる(図省略)。
- ■顎関節症の診断
- 顎関節症の診断においては、痛みの有無、開口障害の有無の確認がまず重要となる。
- 問診あるいは、実際に顎を動かして運動時痛を確認する。
- 健常状態では40o以上開口できるので、おおよそ3横指分の開口ができるかどうかを診査する。
- 側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋などは触診を行い、
骨の変形などはレントゲン撮影で確認する。
- 顎関節症の約7割を占める関節円板障害の場合、まず関節音(クリック)が現れ、
次いで開口障害、関節痛の順で症状が現れることが多く、
問診により大方診断可能である。
- ■治療法
- 可逆的治療、不可逆的治療に大別される。
- 可逆的治療
- 薬物療法、理学療法
- 最も重要なのは患者に対する疾患の説明と、セルフケアの指導である。
- 薬物療法としては、
消炎鎮痛薬、筋緊張緩和薬、精神安定剤、睡眠改善薬。
- 理学療法ではバイトスプリント療法(マウスピース装着)
- 不可逆的治療
- 変形性関節症、関節円板障害の一部について開放手術、咬合治療
- ■セルフケアによる治療と予防
- 筋症状を主とする顎関節症では、日中、夜間のくいしばりが原因になっている場合が多い。
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このような患者は上の歯と下の歯が当たっているのが普通という感覚を持っているので、日中のくいしばりをやめるように指導することで改善されることもある。
- 歯ぎしりが原因の場合は、バイトスプリント療法により症状が軽快しても、再発予防のために睡眠時のスプリントの装着を継続することが多い。
- 一般に、固い物は噛まないようにし、食事をする場合は、痛みのない側で柔らかいものを噛むように指導する。
- 痛みのない側で噛んでも痛む場合は、さらに柔らかい食事にし、経過を観察する。
- 筋緊張があれば、ハミングをしたり、腹式呼吸で特に吐く時に大きくゆっくりするようにすすめる。
- 顎関節症は、ある意味では自分で作った病気ともいえ、生活習慣病とも言える。
- 日常生活における悪習慣を改善することが、治療にも予防にも最も重要と考えられる。
表1 顎関節症の分類
- 1.咀嚼筋障害 masticatory muscle disorders(顎関節症T型)
咀嚼筋隠害を主徴候としたもの
- 2.関節包・靭帯障害 capsule-ligament disorders(顎関節症U型)
円板後部組織・関節包・靭帯の慢性外傷性病変を主徴候としたもの
- 3.関節円板障害 disc disorders(顎関節症V型)
関節円板の異常を主徴候としたもの
a:復位を伴うもの
b:復位を伴わないもの
- 4.変形性関節症 degenerative joint diseases, osteoarthitis(顎関節症W型)
退行性病変を主徴候としたもの
- 5.その他のもの (others)
以上のいずれにも分類されないもの
- 注:degenerative joint diseasesはosteoarthritisまたはosteoarthrosisとも表記する
【日本顎関節学会、1996】
図1 私の考えるTMDの発症メカニニズム
主幹:筋機能亢進→(咀嚼器官の構造的耐久限界)→組織変性→疼痛・機能障害
主幹に影響を与え・受ける因子
1.機能活動:筋機能亢進←機能活動(偏咀嚼・顎偏位)←負担域の制限←疼痛・機能障害
2.異常活動:筋機能亢進←異常活動(くいしばり・歯ぎしり)←ストレスの増加←疼痛・機能障害
コステン症候群
- 医歯薬出版の医学辞書にはつぎのように解説されています。
- こすてんしょうこうぐん
Costen* syndrome
James Bray C.(1895‐1962,耳鼻,米).顎関節部の疼痛とともに,難聴,耳鳴,耳閉塞感,耳痛,めまい,咽頭痛,舌・鼻の灼熱感などを呈する症候群.側頭下顎関節の咬合不全により顎関節骨頭の後上方への移動により,耳介側頭神経,鼓索神経が刺激され,これらの症状が起こるとされている.診断には下顎関節部の触診やX線検査が必要である.
- わたくしは顎関節症のことをコステン症候群というのだとばかり思っていました。
- 清水市立病院口腔外科井川雅子先生にうかがったところ
> Costen症候群という言葉は
>
医師はいまだに大学でこのように習っていると聞いていますが
> これは100年前の概念で、
> かみ合わせが低くなると顎の症状や耳が聞こえにくいなどの症状がでてくる(らしい)というものです。
>
誤った病因論、耳鼻科的疾患との関連の根拠なしなどで、現在は使われていません。
> 昨年UMDNJで研修を受けたときに、教授がTMDの患者の症状を説明した上で我々に
> 「さて、この患者の診断をしてみなさい」という形の臨床講義がありました。
>
その時に、某が「Costen症候群だと思います」と答えたため、
> あとで教授に「100年も前の病気を持ち出すんじゃない」と首を絞められていました。
> そのときはみんな、おなかの皮がよじれるほど笑いました。
> そのくらい現在では奇妙に聞こえます。
ということでした。
- 顎関節症=コステン症候群というと思っている方は、間違いです。ご注意ください。

急増する顎関節症=なぜ顎関節症は女性に多いか
水谷英樹(名古屋大学歯科口腔外科)、医学のあゆみ
187(3):197-199,1998より
■女性に多い顎関節症
アメリカの顎関節の機能異常の頻度=20〜40%
わが国では,顎関節症状を有しているのは28〜65%との報告があり,
これらのうち,治療を要するとされる割合は5〜7%と推計されている。
一般的に,症状を覚えて医療機関を訪れる理由の多くは疼痛である。
その男女比は1:3から1:9までと幅広い報告がみられる。
当科においても患者の2/3は20歳代で,女性が多い。
最近ではさらに低年齢化する傾向にある.
■なぜ顎関節症は女性に多いか
l.女性ホルモンの影響
一般的に患者層は2つのピークをもつといわれ,ひとつは思春期15〜25歳,
もうひとつは閉経期45〜55歳である.
エストロゲン不足が女性における顎関節症発症の病因になっていることが示唆された。
動物でもエストロゲンと顎関節構造変化との関係が明らかとなった.
2.関節内圧の影響(一説)
女性は男性よりも関節内圧が高かい。高内圧は顎関節円板に障害を与える。
3.関節弛緩の影響
4.外傷の影響
女性のほうが男性よりも直接外傷を契機に症状発現するとの報告が多い。
5.健康意識の影響
顎関節症の患者さんへの注意
(1)かみしめ・くいしばりによる筋肉痛からの解放
1)本来人間の上下の歯が接触するのは、
物を噛む時と飲み込む時だけだということを覚えておいてください。
2)もし、かみしめやくいしばり、はぎしり等をしていると、
あなたの噛むための筋肉や関節は持続的に破壊され、
治療しても効果が現れにくく、なかなか治らないという結果になってしまいます。
このような癖がありましたら、ただちに止めるよう注意してください。
3)かみしめやはぎしりの習慣を止める最も効果的な方法は、
唇を閉じて歯を離すことを覚えることです。
「唇を閉じて、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜く」ことを意識して努力してください。
このことを1日に何度も練習してください。
この簡単な方法で顎の関節と筋肉は非常にリラックスし、緊張やこわばりから解放されます。
そして筋の緊張によって引き起こされていた、顎や首のまわりの痛みは少しずつ引いていきます。
(2)顎関節症:痛みが強いときの注意
早く痛みを引かせるためには顎関節と顎の筋肉を安静にすることが重要です。
以下の注意をよく守ってください。
*食事の注意:口を大きく開けない・固い物を噛まない・長く噛まない
1)食べ物は一口で食べられる大きさに切って、口を大きく開けることを避けてください。
2)パンの皮の固いところや生野菜、肉など、固い物、長く噛まなければならない物は避けてください。
3)チューインガムは無意味に顎を酷使しますから、ガムを噛んではいけません。
(原案:清水市立病院口腔外科井川雅子)

日本顎関節学会のweb-page
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